「当たり前」を疑って事業機会を見つける(辰野 博一 ショートエッセイ)
10年ほど前、ランドセル売場に行ったとき、驚いたのはカラーリングのバリエーションの多さでした。長い間、ランドセルの色は黒と赤の2色であったと思いますが、百貨店の売り場で見たランドセルは実に様々なカラーの品揃えがありました。
 
そして今、「ランドセル=皮製」というスタンダードも変わる兆しもあるようです。学校用品メーカーのフットマークが2020年に布製ランドセルを発売し、その後、モンベル、イオン、ニトリ、イトーヨーカ堂といった大手企業も相次いで布製のランドセルを市場投入しています。
 
そもそも、ランドセルの使用を指定している小学校は少数であり、ランドセルの色や素材についても制約はありません。また、特に低学年の子どもが、高学年の子と同じサイズの重いランドセルを背負って登校させるのはかわいそう、という話は、昔からあったように思います。
 
この課題に対して、革製のランドセルメーカーは人工皮革の採用や芯材の工夫による軽量化、形状の工夫による重量の分散で体感重量の軽減などの工夫によって対応してきました。ただ、布製ランドセルの登場がここ数年で盛んになっているという状況は、業界の企業はこの課題を把握していたであろうことを踏まえると、遅きに失している印象があります。多様性を認めるという社会の雰囲気に、ようやく後押しされたのかもしれません。
 
この事例にみられるような、社会的な「当たり前」によって発生している「不」「負」の解消が新たな事業機会を生む可能性は、多くの業界に眠っているように思われ、当たり前を疑う事の大切さを示唆してくれます。また、多くの選択肢から個々のニーズに合った商品を選べることが保護者/消費者にとって望ましい状態であることから、布製ランドセルや他の選択肢の認知が拡大し、存在が浸透していくことが期待されます。
<参考>
日経トレンディ2024年6月号(日経BP社)「業界を変える人 軽い布製で子供を”痛学”から解放 ランドセルは買い替える時代に!」
時事通信社ホームページ(時事ドットコム)2024年5月5日付「なぜ解決しない?『ランドセル重過ぎ』問題◆嘆く小学生、軽量化阻む犯人は・・・【時事ドットコム取材班】」詳しくはこちら→
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